えっちゃんの中国美大日記 第29回「大都美術館 陈淑霞インタビュー 「かたち」がなくなるとき」

えっちゃん5
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北京の胡同(昔ながらの北京の路地裏)、国子监街乙28号にひっそりと中国式の建物がある。これは安藤忠雄がデザインした私立美術館、大都美術館である。
先日5月23日に大都美術館にて画家の陈淑霞の個展が開かれた。東洋と西洋の融合、伝統と現代アートの融合をもとに、かわいらしい絵を描く。また教育科の主任であり、中国の美術教育(ここでいう美術教育とは小学校の美術教育、中学校の美術教育の研究)にもたずさわる。

江上:今回の展覧会のタイトルは「忘形」ですよね。
陈淑霞:わたしはずっと「有形」と「無形」の間を遊離したり、葛藤したりしていました。今回は「かたち」からもっと離れて、いっそのこと「かたち」を忘れてしまおうと思いました。

江上:でも抽象画とまではいかない。

陈淑霞:そう、純粋な抽象画まではいきたくないんです。あくまで自分で描いていても、あれに見えるかも?これに見えるかも?と思えるぐらい。観ている人もぱっと見ると抽象、でも何が描いてあるかはわかる。想像の余白を残したいですね。

江上:2000年ごろは人物や静物が主でしたが、新作には抽象的な作品、風景が多いですね。

陈淑霞:テーマにそこまでこだわっているわけではないの。人物をずーっと描いていたら静物が描きたくなるし、静物を描き続けたら風景を描きたくなるもの。同じように今回の新作はほとんどベージュ調が多いけれども、最後に何枚か吹っ切れるような、とても明るい色で描きました。

展示風景

展示風景

江上:ベージュの絵は一見水墨画かと思いました。でも近くで見るときにあ、油絵だって(笑)

陈淑霞:その効果を狙っていました(笑)今は新水墨が流行っているなんていうけれども、私はずっと中国の昔の水墨をよくみたり、模写したりしていました。今の新水墨と比べてもやっぱり昔のほうが断然いい、心がこもっていますからね。時代に流されて、売りやすい絵を描く人はたくさんいます。でも流されず、沈殿したものとした出された作品がやはり魅力的です。日本の作家にはそういう人が多いですね。もっと真摯に絵と向き合っている。
私も実はこの展示は2013年と約束していたのです。でもまだ作品に満足ができなくて2014年に延ばしたのですが、新作の完成度をもっとあげたいとまた2014年の後半にのばして、そうしていくうちにもう延ばせないと思って、2015年今年やっと展示ができました。実は中国の市場が一番よかった2006年のときはそんなに展示をしませんでした。そのときは展示も多すぎるし、なにか府に落ちないところがありました。

江上:やっと開いた個展はやっぱり見ごたえがあります。先生は中央美術学院では美術教育科の主任ですよね。

陈淑霞:ええ、美術教育はとても重要で、政府も重視しているので仕事がたくさんあります。でも教育科というのは藝術管理科(キュレーターに近い)とまったく逆で効果がゆっくりだし、まず上の世代の考えも変化しなければいけない。だからこつこつ、徐徐に力あつくものです。

常に微笑みながら、優しくインタビューに答えてくれる陈淑霞の作品は本人と同じくとてもかわいらしい。

今日、藝術管理科と教育科が人文学院から独立し、藝術管理与教育学院が成立。中国の美術界はまだまだ変化していきそうだ。

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左から劉慶和、お嬢様、中国美術家協会主席の靳尚谊、陈淑霞、筆者、助手

左から劉慶和、お嬢様、中国美術家協会主席の靳尚谊、陈淑霞、筆者、助手


2015.5.25
江上 越(Egami Etsu)
1994年千葉市生まれ。千葉県立千葉高校卒業後、2012年中国最難関の美術大学・中央美術学院の造型学院に入学。制作と研究の日々のかたわら、北京のアートスポットを散策する。ここでは北京のアート事情、美大での生活などをレポートしてもらう。