西村沙由里 《不帰ノ嶮》

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西村沙由里 《不帰ノ嶮》

銅版画(エッチング、アクアチント)
商品名: 西村沙由里 《不帰ノ嶮》
商品番号: 20121001
販売価格:

\140,800

消費税: \12,800 内税
規格: 2017年 85×60cm 銅版画、ハーネミューレ、雁皮紙 ED.20 (額付) 

商品詳細
銅版のマチエールで召喚する
神話世界のドラゴンたち

野口玲一

 ヨーロッパにおいて東洋の龍に相当するのはドラゴンだが、その両者には違いも多くある。鱗に覆われるのは共通だが、ドラゴンには翼があり、鋭い爪、牙やくちばしを持ち、毒や炎を吐く。多くは邪悪な存在とされ聖ゲオルギウスにより退治される物語も生まれた。一方で東洋の龍は水の神であり神聖な霊獣とされ、とくに中国において五爪の龍は皇帝の象徴として尊ばれた。
 西村が描く姿には有翼のものが多く、どちらかといえばドラゴンということになる。しかし作者はその区別に重きを置いていない。爬虫類をはじめとして様々な動物の姿が複合されたドラゴン/龍の多様性に魅力を感じているのだという。そこには人間が恐竜と共存していた頃の記憶が反映されているのだという意見もある。邪悪な存在に対する畏れはそれに対する神聖視にも繋がるだろう。両者の表象における差異ではなく、それを越えた根源的なあり方に興味を抱いているのだ。
 テーマとの出会いが今風で興味深い。入口はドラゴンクエストやファイナルファンタジーといった定番のコンピュータゲームだったという。好きが昂じて自分なりに龍の姿を創作するようになり、それがネットで評価され、銅版の制作へと繋がった。手法としてはオーソドックスなエッチングやアクアチントと言って良い。しかしモノクロームの銅版が持つ、硬質で重いマチエールの生み出す陰影の深い調子が、ドラゴンの姿に強いリアリティを与えているのは言うまでもない。
 ドラゴンは神話の世界にしか棲んでいないとか、龍や虎は武将好みの骨董じみた画題に過ぎないとか片付けてしまうような人には、この仕事は既に確立された技法で伝統的な主題に取り組んでいるだけに映るかもしれない。しかしこの作家はそこになお汲むべき源泉を見出し、想像力が新たに飛翔する余地を切り拓いているのである。
(美術評論家)


にしむら・さゆり
1988年北海道生まれ。2013年東北芸術工科大学大学院洋画研究領域版画専攻修了。12年日本版画協会展山口源新人賞、15年CWAJ現代版画展審査員特別賞、18年PREMIO LEONARDO SCIASCIA amateur d’estampes IX Edizione 2018-2019(イタリア)二等賞ほか受賞多数。現在、日本版画協会会員。

この作品は美術誌「月刊美術」との連動企画です。作品の応募は2020年12月10日を締め切りとしてご応募を受け付け、応募多数の場合は抽選いたします。
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