吉田潤 《星兎》

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吉田潤 《星兎》

商品名: 吉田潤 《星兎》
商品番号: 20092002
販売価格:

\100,000

消費税: \9,090 内税
規格: 33.3×24.2cm 和紙、顔料、墨、インク 額付

商品詳細
琳派の奥行と複雑性に通じる
絵画における版的思考法
 
 動物や花に取り囲まれた少女がそこにいる。種々の花冠や指先に止まる蝶は少女の可憐さを際立てるが、傍の鶏に目をやるとその姿は不気味な細部の集積によってなされていることに気付く。少女の頭部から肘の辺りに至るまで流れるようにモチーフが配されているが、そこには妖気が漂うようにもみえ、花=美というのも先入観に過ぎないように思えてくる。この不穏さがかえって少女の無垢さを引き立てているのも事実だろう。密集させられた細部がうねるような動きを生んでいるが、それが伊藤若冲のように画面全体を埋め尽くすだけなのではなく、生き生きとした余白をもたらしていることも特筆すべき点である。
 作家はこの画面をどのように生み出しているのだろうか。主だった手法は木版だが、版画をコラージュし、そこに手描きを交えながら画面を組み立てていく。同じ版から複数の作品を摺る版画というより、版を利用したオリジナル絵画と考えた方がふさわしい。このような手法は決して変則的なものではなく、伝統絵画においてはしばしば見られるものだった。顕著なのは琳派だ。尾形光琳は《燕子花図屏風》(根津美術館蔵)で、花の群に型紙を用いることでリズミカルな構成を創り出した。俵屋宗達は、濃淡のニュアンスをつけて摺ることで「金銀泥摺絵」の奥行ある空間を生んだ。パターンを用いながらめくるめく効果を追求することが常套的になされていたのである。図版をチラと眺めただけでは分かりにくいが、それでもしばらく観ていると、貼り重ねられた版画の風合いと、手描きのタッチが相まって、画面に複雑なニュアンスと深みをもたらしていることに気付くはずだ。
 この作家の作品は、版画家と画家が職能的に分化させられた近代以降の我々の感覚からすると例外的に思われるかもしれないが、歴史を紐解いて考えるなら、絵画の中に版的な思考法が根深くあったことに気付かせてくれるのである。
(野口玲一/美術評論家)


よしだ・じゅん
1982年東京都生まれ。2006年東京藝術大学美術学部絵画科日本画専攻卒業。08年同大学大学院美術研究科修士課程版画修了。09年大学院研究生修了。14〜18年京都精華大学芸術学部メディア造形学科版画コース特任講師。10年アダチ版画UKIYOE大賞、13年鹿沼市立川上澄生版画大賞審査員特別賞、15年新生絵画賞展優秀賞など受賞多数。個展を中心に活動、国内外のグループ展、アートフェア出品なども多数。



この作品は美術誌「月刊美術」との連動企画です。作品の応募は2020年9月10日(木)を締め切りとしてご応募を受け付け、応募多数の場合は抽選いたします。
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