えっちゃんの中国美大日記 第47回「ここにいながら、どこにもいない 元典美術館」
「不在此地、不在別処」展
グローバル化する社会、東京であれ、北京であれ、私達は街の中に日頃いつでも外国人をも見ることができます。特に日本から北京にきた私にとっては自分も異邦人であり、不思議な感覚がします。そのような疑問、考えなどを今回、私が北京の元典美術館にて「不在此地、不在別処」展をキュレーション、制作しました。
3国のキュレーターと多国籍アーティスト
今回のキュレーションには、Mary Ellen Storm（アメリカ）、段少峰（中国）、江上越（日本）の3人で展示を企画し、アーティストも中国人アーティストと、ボストンから招いたアーティスト、中国で長期滞在制作している外国人アーティストの大きく分けて3種類、日本、アメリカ、フランス、スペイン、中国のアーティストのグループ展となっています。
展示のテーマには「不在此地、不在別処」、つまり日本語で「ここにいながら、どこにもいない」と名付けました。展覧会に関する文章は以下です。
そこで目指されている世界はどのような世界なのだろうか
北京で出会ったあるアメリカの友人の言葉が今でも記憶に新しい。「日本に行ったとき『外人』と呼ばれた」と彼にすごくシリアスな目線で言われた。そんなこといったら、今はまた「老外」と呼ばれているじゃないか、と私は思わず意地悪く連想してしまった。ふと自分も留学の身での身分をすっかりと忘れてしまっていた。
「外人」と「老外」は中国語ではほかの意味もあるが、どちらにしても、移民の歴史を持つアメリカ人の受け止め方はきっと私たち東洋人とはかなり異なるものに違いない。しかし、わたしたちはどこにいるのか、どこにいるべきかとういう疑問があったり、もっと未知の世界を知りたい夢もあったりすることはきっと同じだと思う。現実、環境的に、生理的に、または人為的にも私達がある種の視界しか見えない限界があると感じでしようがないが、それにしても、若い私達は外に出よう、新しい世界を求めようとしている。それほどの見識や力もないし、この世界のこともよくわかってないけれど、現在地で、この国、ここの人々に接して、影響し合ったり、関係し合ったりして、ここで私と他の一番境界線にある場所として表現のこころが現れているのだろう。ひとつ新しい世界が広がるに違いない。
ときにはグローバルだったり、ときにはインターナショナルだったり、グローバルとインターナショナルは似て非なるとしても、人間と場所との関係から生まれるそれぞれのことに直面されなければならない。そこで目指されている世界はどのような世界なのだろうか。
私達は、いつからいつまで異邦人なのか？故郷は、生活地なのか、出生地なのか、それでも本籍なのか。考えさせることが多い。
アイデンティティーとはどのような意味をもつのだろう。人類として、人間ってなんだったのだろうかと私に思わせる。
今回の展覧会では中国に一時的通過人（パッセンジャー）としてのアメリカボストン美術学院の若いアーティストと、北京で長期滞在制作している外国人アーティスト、中国生まれ育ちの中国人アーティストという３種の異なるアーティストが中国北京の元典美術館に集う。
このたびの展覧会には元典美術館の谷燕さん、キュレーターの段少峰、一緒に集まってくれたアーティスト達、そしてずっと支えてくれた家族に感謝する。
オープニング 左から、司会者、金秀花館長、創設者谷燕、通訳、Mary Ellen Storm、江上越、段少峰、彦風
江上越の作品の前で
展示会場
展示に来てくださって中央美術学院彫刻科第三工作室主任の于凡先生（右）江上越