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えっちゃんの中国美大日記 第17回「中国美術館 中国写実画派10年 大規模回顧展」

えっちゃん5 dotline 11.7-11.17の10日間、中国美術館で中国写実画派の成立10周年の大規模回顧展が開かれた。中国写実画派は2004年に北京にできた芸術家団体「北京写実画派」からきている。この画派は現在合計31人いて、全員中国トップクラスの写実画家が集まっている。今回は成立後の最大規模の回顧展で、450余りの作品が展示される。また今回は中国藝術研究院、中国藝術研究院油画院、山東省美術館などの後援があるため大規模である。 会期が10日間という日本ではありえない短期間、かつ中国一流の写実の作品が集まっているということで、今日の閉幕式には多くの来場者が来た。人が多すぎて、もはや絵を見るのは非常に困難。そもそも油絵の特徴は対象物を立体的に描くことができるので、中国では油絵といったら写実絵画、本物に近ければ近いほどすごい!!なので中国では写実作家の権威はとても大きい。特に靳尚諠先生は私の通っている中央美術学院の学長を歴任していたこともあり靳尚諠先生が行くところには常に人だかりができていた。
中国美術館外観

中国美術館外観

閉幕式の舞台裏から 人がいっぱい!

閉幕式の舞台裏から 人がいっぱい!

会場内

会場内

冷軍の作品に見入る来場者

冷軍の作品に見入る来場者

参加作家による討論会 同日午後4時に参加作家による討論会があった。討論会といっても10周年の座談会で、内容は「多くの画家が60歳を超える年齢のため写実を描くのにとても苦労する」、「老眼で対象物や描いてる作品がよく見えない」という話が出ていたり、「写真、映像の時代において絵画の役割、油絵とは今の社会を表すことが必要」など、多くの観点が出てきた。北京や武漢、天津、上海などそれぞれの出身の作家が同一の席で討論する写実はとてもおもしろい。
参加作家による研討会はリラックスムード

参加作家による研討会はリラックスムード

研討会にて発言する冷軍の意見はとても鋭い。

研討会にて発言する冷軍の意見はとても鋭い。

多様な「写実」 展覧会を見ると一口に写実といっても、それぞれ文脈が異なることがわかる。私が感じたのは、早期のソ連を模倣したロシア派、ラファエロのような欧州古典派、アメリカ風の現代写実派、早期ルネサンス派などさまざまである。写実は本物に似ている、「実を写す」と書いて「写実」だけれども、実際人間の目は都合のよいように調整してくれるので、スーパーリアリズムでなくてもその「もの」がその場にあるように感じる。世界の現代アートを見ても写実を描いている人は多いし、そもそも写実の定義でさえ困難、無限に広がっていく宇宙のようにどんどん境界線が広くなっている気がする。 「写実」の未来性 15世紀ネーデルラント地方でファン・アイクによって発明された油絵が誕生してから600年、油絵の特徴である三次元性(写実性)は幾度も転換されてきた。そしてこれからもきっと新しい写実性を見せてくれるに違いない。少なくとも今回の中国写実画派10周年回顧展は、私たちに新しい領域を問いかけていることは間違いない。 「中国写実画派10年展」 場所:中国美術館(北京) 会期:2014.11.7-11.17 江上 越(Egami Etsu) 1994年千葉市生まれ。千葉県立千葉高校卒業後、2012年中国最難関の美術大学・中央美術学院の造型学院に入学。制作と研究の日々のかたわら、北京のアートスポットを散策する。ここでは北京のアート事情、美大での生活などをレポートしてもらう。


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